共用レンタルサーバーで数百MB~数GB規模の大容量ファイルを転送する際の失敗リスクを最小化し、作業効率を最大化するテクニックをまとめました。FTPクライアントのResume(再開)機能、タイムアウト設定、分割アップロード、最適な時間帯の選定など、実務で即役立つノウハウを詳しく解説します。
目次
- 大容量ファイル転送の課題
- Resume(再開)機能の活用
- タイムアウト設定と同時転送数
- 分割アップロードの手法
- 圧縮&サーバー側解凍のポイント
- 転送に適した時間帯の選定
- 自動化スクリプトで定期転送
- 各FTPクライアントでの設定例
- まとめ
1. 大容量ファイル転送の課題
- 途中切断:ネットワーク不安定やサーバーのアイドルタイム制限で、転送中に接続が切れる。
- 再アップロードの手間:容量が大きいほど、最初からやり直すのは時間と回線帯域の無駄。
- サーバー負荷:大量の小ファイルや一度に大量データを送信すると、共用サーバー側でリソース制限に引っかかる場合がある。
これらを防ぐには、再開機能を備えたFTPクライアントを使うとともに、分割アップロードや適切な時間帯選定が肝要です。
2. Resume(再開)機能の活用
2.1 Resume機能とは
転送が中断された位置から再開できる機能。FTPサーバーが「REST」「APPE」コマンドをサポートする必要があります。
2.2 対応クライアント例
- FileZilla: 自動的に既存ファイルサイズを検出して再開
- WinSCP: 「転送設定」でResumeを有効化
- Cyberduck: 一部バージョンで再開対応だが、安定度はFileZillaに軍配
2.3 設定方法(FileZilla例)
- [編集] → [設定] → [転送] → [転送モード] で「File exists action: Resume」
- [タイムアウト] を長め(120秒など)に設定
- 大容量ファイルをアップロード → 中断後再接続すると再開ダイアログが表示される
3. タイムアウト設定と同時転送数
- タイムアウト延長:デフォルト30秒→120~300秒にすると、大容量送信中の一時的ネットワーク遅延に耐えやすい。
- 同時転送数:共用サーバーでは「同時接続数制限」があるため、2~3程度に抑えることで切断頻度が下がる。
- キュー管理:キューに大量ファイルを登録せず、数十ファイルずつ実行すると安定。
4. 分割アップロードの手法
4.1 圧縮&分割ツール
- 7‑Zip (Windows):
7z a -v200m archive.7z folder/
で200MBずつ分割 - WinRAR:分割設定を「ボリュームサイズ 200MB」等に指定
- tar + split (Linux/Mac):
tar cz folder | split -b 200m - archive.tar.gz.part
4.2 サーバー側での結合・解凍
- SSH利用可:
cat archive.7z.* > archive.7z && 7z x archive.7z
- 共用パネル解凍機能: コントロールパネルの「ファイルマネージャ」で一括解凍
- 注意: パーミッションやディレクトリパスは予め確認
5. 圧縮&サーバー側解凍のポイント
- ファイル属性保持:ZIPや7zの場合、Linuxのパーミッション情報は失われる。必要に応じて解凍後に
chmod
設定を行う。 - 解凍タイミング:アップロード直後に解凍するとサーバー負荷が高まる場合があるため、アクセスが少ない深夜帯に処理すると安全。
- ログ出力: 解凍コマンドが可能な場合、
-y
オプションやログ出力先を指定し、エラー発生時に原因を追いやすくする。
6. 転送に適した時間帯の選定
- 回線混雑:平日昼間は自宅/オフィス回線が混みやすく、大容量ファイルが遅延しやすい。
- 推奨時間帯: 深夜(0~5時)や早朝(5~8時)、土日祝の昼間以外の時間帯
- スケジュール実行: Windowsタスクスケジューラやcronで深夜自動転送を組むと安定性UP
7. 自動化スクリプトで定期転送
bash
# example_sync.sh (LinuxサーバーまたはWSL用)
#!/bin/bash
HOST="ftp.example.com"
USER="username"
PASS="password"
REMOTE_DIR="/backup/"
LOCAL_DIR="/mnt/c/backup/"
lftp -e "
set ftp:ssl-allow yes
set net:max-retries 3
set net:timeout 300
mirror --reverse --only-newer --parallel=2 $LOCAL_DIR $REMOTE_DIR
bye
" -u $USER,$PASS $HOST
- lftp の
mirror --reverse
でローカル→リモート同期。 --only-newer
--parallel=2
で再転送と並列数を制御。
Windowsでは同様にWinSCP.comのスクリプト機能を利用し、タスクスケジューラで深夜実行を設定可能。
8. 各FTPクライアントでの設定例
機能 | FileZilla | WinSCP | Cyberduck |
---|---|---|---|
Resume機能 | 「File exists action: Resume」設定 | 「転送」→「ファイル存在時の動作:続行」 | 再開対応度にやや差異あり |
タイムアウト | 設定→接続→タイムアウト(秒数を延長) | 環境設定→接続→再接続タイムアウト | Preferences→Connection |
同時転送数 | 設定→転送→同時転送数 | 転送→同時転送数 | Preferences→Transfers |
分割再結合 | 外部ツール利用 | 同上 | 同上 |
9. まとめ
- Resume機能を活用し、途中切断後も再開できるFTPクライアントを選定する。
- タイムアウト延長 & 同時転送数の抑制 で安定性向上。
- 分割アップロード+サーバー側解凍で1ファイルあたりの転送リスクを低減。
- 深夜帯・早朝の時間帯に転送を行うことで回線混雑を避ける。
- スクリプト自動化で定期バックアップ・ミラーリングを実現し、手動作業を削減。
これらを組み合わせることで、共用レンタルサーバー環境でも大容量ファイル転送が快適かつ安全に行えます。ぜひ、上記テクニックを試してみてください。
参考リンク
免責事項
本記事の内容は執筆時点の情報をもとにしています。環境やソフトウェアのバージョンにより手順や画面構成が異なる場合がありますので、必ず自己責任でご利用ください。