以下では、WinSCP 6.5 を対象にした「基本操作の習得」について解説します。初心者の方でもスムーズにファイル転送・管理ができるよう、それぞれの操作手順を具体的に紹介します。
1. ローカルとサーバーの画面構成を理解する
2. ファイルのアップロード・ダウンロード方法
3. フォルダ作成や削除、リネームなどの基本操作
4. ファイルパーミッション(属性)の設定方法
5. まとめ
1. ローカルとサーバーの画面構成を理解する
WinSCPを起動すると、エクスプローラ形式 または コマンダー形式 のいずれかで画面が表示されます(2.4 インターフェイス選択 参照)。操作が若干異なる場合がありますが、基本的な構成・概念は同様です。
1.1 エクスプローラ形式の場合
- 単一ウィンドウ
- Windowsのエクスプローラと同じように、左のツリー表示や右側のファイルリストなど、1ペインを中心に操作します。
- ローカルのフォルダは、WinSCPウィンドウ内で「ローカルディスク(C:) → …」のように表示され、リモートサーバーは接続先ディレクトリが階層表示されます。
- ドラッグ&ドロップ転送
- Windowsデスクトップやフォルダから、WinSCPウィンドウにファイルをドラッグすれば「アップロード」として扱われるのが特徴です。
1.2 コマンダー形式の場合
- 左右に分割された2ペイン
- 左側ペイン:ローカル(自分のPCのフォルダ)
- 右側ペイン:リモートサーバー側のディレクトリ
- ファイル転送は、左右のペイン間でドラッグ&ドロップを行うのが基本です。
- アドレスバーやツリービュー
- 画面上部や下部に「ステータスバー」や「アドレスバー」が配置され、どのディレクトリを開いているかが分かりやすくなっています。
1.3 画面上の共通機能
- セッションパネル
- 上部に、接続中のサーバー情報やタブが表示される領域があり、複数のサーバー接続を同時に管理できます。
- ツールバー
- 「アップロード」「ダウンロード」「同期」「設定」などの各機能へ、アイコンボタンでアクセスできます。
- ステータスバー
- 選択中のファイル数や容量、現在のファイル転送状況などを表示する場合があります。
ポイント: 画面構成は「コマンダー形式」のほうがファイル操作の全体像を把握しやすいですが、Windowsエクスプローラに慣れている場合は「エクスプローラ形式」が直感的でしょう。自分の作業スタイルに合ったインターフェイスを選ぶのがおすすめです。
2. ファイルのアップロード・ダウンロード方法
2.1 アップロード方法
- サーバーに接続
- WinSCP起動後、ホスト名やユーザー名を指定してサーバーに接続します(詳細は「4. サーバーへの接続方法」で解説予定)。
- アップロード先ディレクトリを開く
- サーバー上のフォルダを右ペイン(またはエクスプローラ形式ならメインウィンドウ)で開きます。
- 例:
/home/username/public_html/
など。
- ローカルファイルを選択
- コマンダー形式:左ペインでアップロードしたいファイルを選択。
- エクスプローラ形式:WindowsのエクスプローラやWinSCP内でローカルファイルを選択。
- ドラッグ&ドロップ
- コマンダー形式:左から右へドラッグ&ドロップすると、転送ダイアログが表示されます。
- エクスプローラ形式:WinSCP内でサーバー側にドラッグ&ドロップ、またはWinSCPのウィンドウ内にドラッグでも可。
- 転送モードの確認
- 「自動」「バイナリ」「テキスト(ASCII)」などが選べるダイアログが出ることがあります。通常は**自動(Auto)**にしておくと問題ありません。
- 「ファイルの上書きを確認する」オプションが設定されている場合、既存ファイルがあると上書き許可のダイアログが出るので、選択してください。
- 転送完了
- アップロードが完了すると、サーバー側のディレクトリにファイルが表示されます。
- 成功時はステータスバーやログに「転送完了」の表示が出ます。
2.2 ダウンロード方法
- サーバーに接続
- 上と同様にサーバー接続。
- ダウンロードしたいファイルやフォルダを選択
- コマンダー形式の場合は右ペインで、エクスプローラ形式ならサーバー側ファイルリストから選択します。
- ドラッグ&ドロップ
- コマンダー形式:右ペインから左ペインへドラッグ。
- エクスプローラ形式:サーバー側ファイルをローカル側へドラッグ。または右クリックメニューから「ダウンロード」を選択することも可能。
- 保存先の確認
- ダウンロードダイアログが出る場合、ローカルの保存先フォルダを指定できます。
- 上書き確認や転送モードを必要に応じて指定して「OK」。
- 転送完了
- ローカル側にダウンロードしたファイルが保存されます。
ポイント: 大量のファイルや巨大ファイルを扱う場合、転送中にネットワークが途切れても再接続で途中から再開できることがあります。転送ログやステータスをこまめにチェックしておくとよいでしょう。
3. フォルダ作成や削除、リネームなどの基本操作
3.1 フォルダ(ディレクトリ)の作成
- コマンダー形式
- 対象ペイン(ローカル or リモート)をクリックしてアクティブにする。
- メインメニューやツールバー、または右クリックメニューで「新規フォルダ」や「新規ディレクトリ」を選ぶ。
- フォルダ名を入力してOKすると、フォルダが作成されます。
- エクスプローラ形式
- 画面上部のツールバーまたは右クリックメニューにある「新規フォルダ」ボタンを使うか、右クリック → New → Directory などで作成します。
3.2 フォルダやファイルの削除
- 選択 → Delete(削除)
- 消したいファイルやフォルダを選択し、右クリックから「削除」を選ぶか、Deleteキーを押します。
- サーバー上の削除はローカルのゴミ箱には入りません。誤削除を防ぐために事前にバックアップをとることを推奨します。
3.3 リネーム(名前変更)
- ファイル名をゆっくり2回クリック(エクスプローラ形式)
または 右クリック → Rename で名前変更モードになります。 - キーボードのF2キー(コマンダー形式など)でもリネームモードに切り替え可能です。
- 名前を入力してEnterで確定すれば完了です。
3.4 移動(ドラッグ&ドロップ)
- 同一ペイン内でのドラッグ&ドロップ(コマンダー形式の場合は右ペイン内、エクスプローラ形式なら同一ウィンドウ内)でファイルやフォルダを移動できます。
- 別のフォルダに移動するときに上書き確認ダイアログなどが表示される場合があります。
注意点: サーバー上のファイルを削除・移動すると、即座にサーバー内容が変更されます。誤操作やトラブルを避けるため、必ず作業前にバックアップを取るか、テスト用フォルダで確認してから本番環境を操作しましょう。
4. ファイルパーミッション(属性)の設定方法
WebサーバーやLinuxサーバーなどでは、**ファイル・フォルダのアクセス権(パーミッション)**を正しく設定することが重要です。WinSCPではGUI上で簡単に編集できます。
4.1 パーミッションとは?
- 読み取り (r), 書き込み (w), 実行 (x) の3つの権限を、所有者(Owner)、所属グループ(Group)、その他(Others)の3種類のユーザー区分別に設定します。
- 例:644 は「Owner: 読み書き可 (rw-), Group: 読みのみ (r–), Others: 読みのみ (r–)」の意味です。
4.2 パーミッション設定手順
- サーバー側でファイル/フォルダを選択
- コマンダー形式:右ペインで選択。
- エクスプローラ形式:サーバー側ファイルリストを選択。
- 右クリック → [プロパティ(Properties)]
- 英語UIの場合は「Properties…」や「Permissions…」という表記になります。
- すると、パーミッション編集ダイアログが表示されます。
- パーミッションを数値入力 or チェックボックスで設定
- ダイアログには「Owner」「Group」「Others」それぞれに対し、Read (r), Write (w), Execute (x) のチェック欄が表示されます。
- これらのチェック操作によって「数値パーミッション」が自動的に変化するため、直感的に設定できます。
- 例えば、WordPressのファイルなら「644」や「640」、ディレクトリなら「755」や「750」が一般的です。
- 適用範囲を選択
- 「再帰的に設定を適用(子ディレクトリ・ファイルすべて)」を選択すれば、下位フォルダにも一括でパーミッション変更ができます。
- 不要に適用するとトラブルのもとになるので、慎重に指定しましょう。
- OK ボタンで確定
- 変更内容がサーバーに反映され、パーミッションが更新されます。
4.3 注意点とおすすめ設定
- Webサイトのセキュリティ
- CMS(WordPressなど)では、ディレクトリのパーミッションを「755」、ファイルを「644」とするケースが多いです。
- 「777」のように書き込み権限を広く与える設定は、セキュリティリスクになるため避けるのが原則です。
- SSHアクセス権
- SSHキーなどの秘密鍵ファイルをサーバーに置く場合は、600 (rw——-) のように所有者以外読み取り不可にすることが必要です。
5. まとめ
- 画面構成
- WinSCPは、エクスプローラ形式 or コマンダー形式のいずれかを使用し、ファイル操作を視覚的に行えます。
- ファイルのアップロード・ダウンロード
- 接続後はドラッグ&ドロップ中心で操作可能。大量ファイルや大容量でも再開機能やログを活用すると便利です。
- 基本操作(フォルダの新規作成・削除・リネームなど)
- GUIベースのため、Windowsの操作と近い感覚で扱えます。
- 誤操作によるサーバー上の削除には注意が必要です。
- ファイルパーミッション(属性)の設定
- Webサイト運用やサーバー管理では権限設定が重要。
- WinSCPならチェックボックス操作で簡単に変更が可能です。
このように、WinSCPを使えば、GUIでわかりやすく、かつ強力にファイル操作を行うことができます。次のステップとしては、「サーバーへの接続方法」(FTPとSFTPの違いや鍵認証など)を詳しく学んで、安全にファイル転送を行っていきましょう。